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図書館員の皆様へ

ライブラリアン・インタビュー (アステラス製薬株式会社様)

2011年5月18日

今日は、企業図書室の取り組みについてお尋ねするため、
アステラス製薬株式会社 研究企画統括部 企画管理グループ 課長宮内洋一様(以下宮内、敬称略)、
アステラスビジネスサービス株式会社 研究支援センター情報ナビゲーショングループ グループリーダー、
次長若杉茂様(以下若杉、敬称略)のお二人にお話を伺いに参りました。

(インタビュアー: シュプリンガー・ジャパン(株)マーケティング部 田辺 祐子、以下田辺)


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田辺: 1.早速ですが、御社での図書サービスの概要を教えてください。

宮内: まず、私たちのサービスは、リサーチ、臨床開発、生産までに及びます。それらの各拠点、各部門に対しての学術情報提供や、

業務に関連したデータベースの提供サービス支援をしています。つまりR&D及び生産技術に関連している全部門に対して学術情報の一切を含めてサービスを展開しています。海外では、オランダ、ドイツ、アメリカにライブラリーの拠点を置いています。具体的には、今オランダには研究拠点がありますし、それからアメリカには買収した子会社も含めて5つの研究拠点があります。それら拠点も含めてグローバル契約を結んでいますし、電子ジャーナルだけでなく、データベースを含む学術サービスを、常駐のライブラリアンをおいて展開しています。国内は営業とも業務上の連携をしています。主に東京地区の蓮根、板橋にあるライブラリーが営業全般の複写の一部をサポートしている関係で、営業とも密接な関係を保ちながら、連携して進めています。


若杉: そうですね。外から入手する学術情報、確立された学術情報の全体の窓口です。


田辺: 2.幅広いサービスを提供される中で、強みと言えるユニークなサービスや、また情報ナビゲーショングループさんの

特長は何でしょうか。


P1020144.jpg 宮内: (旧藤沢薬品と旧山之内製薬の)合併以降、特にリサーチ系の

サポートについては、世界各地で可能な限り同じのものを使える環境を整える事を目指しグローバル契約を結んでいます。
また、ドイツやアメリカのライブラリアンとは、1年に1回、グローバル・ライブラリー・ミーティングを開いています。2006年から始めたこのミーティングは、翌年必要なコンテンツを調整したり、あるいは新しいサービス、例えばデータベースやシステムの構築なども合わせて協議したりする場です。
また、Web 2.0が話題だった時期には、Library 2.0と名付け、私たちはこれからどんなことができるだろうか、と可能性について協議するような、フランクなブレインストーミングもやりました。2011年はミュンヘンで開催する予定です。


田辺: 最近はどんな話題で協議されていますか?

宮内: 海外の製薬企業では、medical affairsという部門がライブラリー

を持っていることが多く、研究、開発、営業などに全然こだわらず、全社的にインフラとしての学術提携をしています。
2010年のグローバル・ライブラリー・ミーティングは日本で開催しましたが、そのときの話題は、海外あるいは日本で電子的に学術情報をドクターにサービスするにはどんなことができるだろうか、ということでした。著作権処理のことも引き合いに出しながら、日本で出来ないこと、海外でなら出来ることなどを情報交換し、様々な情報提供サービスがあるということも含めて、初めて日本の営業の学術担当者が入って討議をしました。


田辺: 部門の枠を超えて協議するのは良いですね。

3.では、情報ナビゲーショングループ様の戦略について教えてください。資料を購入する際、優先順位などを付けていますか?


宮内: 研究の優先順位によって資料を購入するということです。

会社のホームページを見てもらうとわかりますが、「領域」というものがあります。一番優先順位が高いのはフランチャイズの領域、あるいは新たにフランチャイズをしようとしている領域です。その他にもいろいろ研究している領域があって、研究の優先順位によって決まります。
リクエストに上がったものは、年に2回行う委員会の中で話しあい、グローバルに及ぶような資料やデータベースはさきほどのグローバル・ライブラリー・ミーティングで話し合いをしています。
海外も国内も、ニーズを収集する時期は大体同じ時期です。先んじてリクエストが来る場合もありますが。


若杉: 海外からはあらかじめ要望をきいておき、このタイトルが欲しいとか、ここの出版社と契約して欲しいとか、それらリクエストについては

概算見積もりを入手し、あまりに高額だからこれはやめようというStop提案と、これはリーズナブルだから行きましょうというGo提案をまとめ、これでいいかどうか、予算負担額も示して、確認を取っていきます。


田辺: 限られた予算枠の中で、サービスの価値を最大化される努力をされていらっしゃるのですね。

4.資料を電子で導入される以前と比べ、サービスを受ける御社の従業員に変化があったとか、情報ナビゲーショングループさんにとってよかったこととか、あるいは、逆に見えてきた課題とかがありましたら具体的に教えていただけますか?


宮内: 表面的なことを話すと、ライブラリーに人が来なくなったということがあります。

国内で発行されている、日本語の単行本、あるいはニュース誌とか新聞などは見には来ている方がいますが、冊子の雑誌を見に来る人が非常に少なくなっていると思います。
特にシュプリンガー社をはじめ、海外の主要な出版社とはグローバル契約をしており、電子ジャーナルは3,000タイトルぐらい利用可能になっているため、その傾向は年々加速していると感じます。
海外はもっと大きな変化がありました。アメリカの例ですが、アメリカにもライブラリースペースがあったんです。ところがグローバルな電子ジャーナルの契約をはじめて、ちょうどもう冊子いらないねとも考えていた時期に、ハリケーン・カトリーナやジャワ島中部地震があり、全部冊子を寄付したそうです。もともと広いライブラリースペースがあったのですが、現在は書架が数本のみ設置されているライブラリールーム程度のスペースになっています。
一方で実際には、アメリカのライブラリーは北南米の各拠点に対して電子的なサポートをしていますし、データベースの教育もウエブ経由で実施しています。アプリケーションを使ってインターネット経由で色々なことが行えるので、情報支援サービスの形態は本当に変わったなと感じています。また、利用統計によって、どの電子ジャーナルがどのくらい使われているかということが明確にわかるようになりましたね。


若杉: グローバル契約は特にそうですが、タイトル数が増えるので、利用者にとっては嬉しい話です。

また結果として1利用あたりの価格は下がることが多く、効果は出ていると感じています。


宮内: 利用については、昔だったら紙の雑誌を見て引用を見てから別の雑誌を探して手にとって見てというプロセスだったのが、

電子ジャーナルではPC上で引用からどんどん電子的にジャンプできますし、関連性のある論文をみてまた更に次の文書へ飛んでいけるので情報入手がすごくスピーディになったなと思います。


田辺: そうですね。利用者が引用をどんどん追っていくので、紙のままだったら使われていなかったコンテンツが使われるようになった

という、潜在的なニーズが少し表れてきたというのは私たちも感じています。
5.それでは、利用促進の面で何か取り組んでいらっしゃることはありますか?


宮内: ライブラリーからは毎週メールベースのライブラリーニュースを発行しています。

社内のホームページでは、iGoogleのように、ガジェット単位でまとめた情報ソースを自由にレイアウト出来るように作りこんでおり、個人のニーズによって好きなようにレイアウトができるようになっています。
ライブラリーニュースもホームページに載せていて、地区ごとに内容が異なりますが、今利用者がどこの地区からアクセスしているのかを自動的に判断して、動的にその地区の情報を表示するような仕組みになっています。


若杉: あと、ユニークなサービスとしては、電子ジャーナルの地区ごとの表示制御にこだわっていって、電子ジャーナルもそのホーム

ページ経由で閲覧していくと、その地区で利用可能な雑誌しか表示されないようになっています。全社では3,000タイトルの契約があっても、その地区で利用できるタイトルだけを表示しているのです。A to Zのタイトル別検索の場合もそうですし、あとデータベースからリンク情報を経由して飛んでいく場合もきちんと地区別表示制御されています。
またどの地区でどのタイトルがどれくらい利用されているかを把握するしくみをつくっています。


田辺: 利用契約内で利用いただくよう徹底されているのですね。本当にライブラリーの業務は大きく変わっているのですね。

6.今お話しいただいたとおり、既に企業図書室の業務は大きな変化を遂げていますが、最後に、今後取り組みたいこと、あるいは図書館はどのように変わっていくと思われますか?


20110518.jpg 宮内: 本当に次々と電子化されているので、ブックも含めて電子化に

取り組んでいかなければいけないと思っています。一方で特に日本語の図書資料は、まだ紙の情報が多く残っているので、電子と紙をどうマネジメントしていったらいいのかというのが大きな課題の1つです。
今は図書システム、どちらかというと紙の単行本を受け入れたり貸したりするような、あるいは検索できたりする、OPACのようなものを提供していますけれども、それをリニューアルしようかと考えた時に、電子と紙の両者を管理可能な適当なシステムがないです。


若杉: 両方を満たすものがないですね。日本は特に。

宮内: どういう仕組みを取り入れたらいいのかというのは大きな

課題です。国内の状況が大きく変わるまで、新しい仕組みを入れないというわけにもいかないし、冊子と電子版を二重管理する投資になるのもいやだなということで、すごく今葛藤しているところです。
電子化に向かって進んでいくというのは間違いないですし、でもサービスはより高質化してタイムリーに提供できて、しかもコンプライアンスにのっとっていて、価格的にもリーズナブルなものを提供していかなければいけないというのは大きな方向性であり課題です。


若杉: 私たちの仕事はいつの時代でも学術情報資源と利用者を結びつけるという仕事です。ユーザーのニーズも常に把握しながら、

一方の学術情報動向の方がどんどん激しく変化してくるので、それに追いついていくというか、そういった役割も大きいのかなと考えています。その中で必要なものを精査して、導入を判断し契約すること、契約交渉がだんだんメインになるのかなと思います。


宮内: 色々なプラットホームを各出版社が構築していますけれども、出版社ごとに新しい検索や分析表示の仕組みがありますよね。

一方で私たちは出版社の区別なく、文献を探していかなければいけません。ですので、どうしても横断的に資料を引っ張ってこられるデータベース、あるいは仕組みというものが必要になってきます。
とある出版社のサイトに行くと、独自の機能があったりしますが、でも必ずしもそれが万能ではなく、他の出版社では利用できない機能があったりします。それぞれを使い分けながら運用していかなければなりません。どうにかして良いとこ取りをして、1つのシステムにならないかなと思うときもあります。資料の電子化やそれを引き出す様々な仕組みが整備された事で、図書室は今やこの中(PCを指さして)に多くが収まってしまっているんです。



[プロフィール]

宮内 洋一様
アステラス製薬株式会社 研究企画統括部 課長
 R&D部門における電子ジャーナル、各種データベースなど社外コンテンツの管理、運用統括
  及びその予算管理、海外Librarianとの協力推進と各種契約のGlobal化の推進

1986年3月図書館情報大学卒業
1986年4月山之内製薬(株)に入社
   東京研究所 図書室に配属となり主に文献、化合物、競合品情報の検索担当
1989年4月同社 筑波研究所 図書室に異動
1995年8月同社 臨床推進部に異動
    主に各病院との治験契約関係書類の管理、契約内容のチェック、ドキュメントマネジメントを担当
2002年5月同社 システム部に異動
    主に治験推進管理マネジメントシステム、図書管理システムなどを担当
2004年7月同社 研開経営部に異動
    各研究所Library運用統括業務、各種データベースの管理統轄業務
2005年4月アステラス製薬(株)発足 研究推進部に異動 現在に至る。
        合併以降、上記業務に加えて海外Librarianとの協力推進と各種契約のGlobal化の推進。


若杉 茂様
アステラスビジネスサービス株式会社 研究支援センター 情報ナビゲーショングループリーダー 次長
 R&D部門における電子ジャーナル、各種データベースなど社外コンテンツの管理、各種契約のGlobal化の推進、
 全社部門からの図書室蔵書複写依頼、著作権処理調整

1985年3月、図書館情報大学卒業
1985年4月、藤沢薬品工業(株)に入社
   研究本部技術情報室システム研究に配属、主にR&D部門の情報系システム開発に従事
   1986年、自社の図書館システムを開発
1987年4月、技術情報部研究開発情報管理に異動
   図書室配属となり、図書・雑誌・電子ジャーナル・文献複写・著作権などの管理
   2000年より海外Librarianとの協力推進、各種契約のGlobal化の推進
2002年4月、業務センター加島業務センター付藤沢ビジネスサービス(株)出向
2003年4月、藤沢薬品工業(株)退職、藤沢ビジネスサービス(株)入社(転籍)
   加島事業所研究開発支援室図書室担当
2005年4月、合併により、アステラスビジネスサービス(株)入社、東京に転勤
   業務部研究支援室
2006年10月、研究支援センター図書GL
2011年4月、研究支援センター情報ナビゲーションGL

Astellas Logo

アステラス製薬株式会社様
アステラス製薬株式会社は2005年4月に藤沢薬品工業株式会社と山之内製薬株式会社が合併し発足した製薬企業で、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」の経営理念のもと、疾患治療のための新薬を世の中に届けるために世界各国で約16,000人の社員が日々研究・開発・営業活動を続けている。
日本国内の図書室は研究所を中心とする7つの研究・開発拠点に展開しており、うち4サイトは専任ライブラリアンにより、残り3サイトは兼任協力者により学術系情報サービスを提供している。
海外は主にMedical Affairs department配下にLibraryを含む学術情報支援機能が存在し、米国拠点(シカゴ郊外Deerfield)、オランダ拠点(Reiderdope)、ドイツ拠点(ミュンヘン)の3拠点に専任担当者が常駐するライブラリーを有しており、米国拠点は北米、南米の各拠点に対し、ドイツ拠点はヨーロッパ主要22カ国の拠点に対し、研究、開発、マーケティング業務への情報サービスを提供している。
また、アジアオセアニアの8カ国の拠点に対するサポートは、アジア統括本部(日本)と連携しながら日本及びドイツの担当者がサービスを提供している。


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