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図書館員の皆様へ

ライブラリアン・インタビュー (聖路加国際病院様)

2011年5月24日

今日は、病院図書室の取り組みについてお尋ねするため、
聖路加国際病院 教育・研究センター医学図書館チーフの河合富士美様(以下河合、敬称略)にお話を伺いに参りました。

(インタビュアー: シュプリンガー・ジャパン(株)マーケティング部 小林 千鶴子、以下小林)

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小林: 1. 聖路加国際病院はトイスラー師の理念*に基づいて運営されていますが、医学図書館でも意識をされて活動されて

いますか?


河合: 病院の理念は職員一人一人が大事にしています。図書館の中にも理念を掲示し、心がけて業務を行っています。

特に「生きた有機体として働く」ということを理念にうたっていますので、守りに入るではなく、状況に合わせ、常に診療をサポートできるような活動をしようと心がけています。


小林: 研究というよりは臨床のサポートがメインということになりますか。

河合: 臨床病院ですので、当然臨床を第一優先として業務を行っています。
Ms.Kawai
小林: 最近、EBM (Evidence Based Medicine)という言葉をよく聞き

ますが、そういう概念が生まれる前から、聖路加国際病院では
意識的にそうした情報を集めていらしたのですね。


河合: 当院では、オンライン検索草創期より、病院図書館としては最も

早くオンライン検索を始めたくらい、文献検索の重要性を意識してきました。当院の日野原重明理事長はオスラーの研究者としても大変高名ですが、オスラーの言葉に、「現代医学で解明された最高のものを診療の場に」という言葉があります。
EBMの理念というのはオスラーの頃から芽生えていたもので、最近はその方法論が整っただけではないかと思っております。また、当院の福井次矢院長は日本のEBM研究の第一人者ですので、EBMの精神は病院の中に深く息づいていると思います。



小林: 2. 医学図書館は教育活動もされていると伺いました。どのようなことを行っていますか?

河合: 図書館は教育・研究センターの一部門です。他に教育研修部と研究管理部があります。オリエンテーションも各職種ごとにきめ細かく

行い、病院の理念が新入職員にも根づくように意識して教育を行っています。またEBMの教育に関しては、臨床疫学センターがあります。そこで臨床疫学の勉強会や、臨床研究を行う際のサポートなどを行っています。


小林: 聖ルカ・アカデミアも、教育の一環でしょうか。

河合: 聖ルカ・アカデミアは、病院の中に臨床研究の風土を育みたいという院長の発案で5年前から始まった年に1回の院内学会です。

教育・研究センターと、他部門の職員から任命した委員で実行委員会を組織して開催しています。
図書館では、聖ルカ・アカデミアのプログラム・抄録集の編集・出版を主に担当しています。
また、院内発表だけで終わらせるのではなく、それをまた外部でも発表し、さらには論文化することを推奨していますので、その後の学会発表や論文化を調査したり,業績集の編集などもしています。


小林: さらに外に向かって発信する機会を作るということですね。日本語ではなく、英語でも発信して海外にもということですか。

河合: そうです。病院では、是非海外でも発表することも推奨しています。単に業務をするのではなくて常に疑問を持ち、より質の高くなる

努力をして、それをまた臨床研究として外に発信していくというのが当院の方針です。あくまでも目的は質の高い医療の提供です。


小林: 3. よりよい医療を追求できるように、よりお医者様の便宜を図った情報の提供の仕方で心がけていることはありますか?

情報リソースを決定する際の戦略をお聞かせください。


河合: 当院では、特に医師のためにといった考え方はせず、医療職、事務職員も含め、すべての職員が自分たちの業務に反映できるような

視点でまず考えています。ですから例えば、臨床で使いやすいEBMツールを積極的に取り入れていますけれども、それは決して医師だけではなくて、看護師もコメディカルも使えるものだと思っています。
電子資料は院内で自由にアクセスできる環境にあり、利用は活発になっております。また、パッケージ契約などの恩恵によりアクセスできる資料が増えたことで、文献の充足率も高まっています。
例えばシュプリンガー社のパッケージは、とてもよく利用されています。これまでは決まったタイトルしか利用できなかったのが、こんなに需要があったのかと逆に驚かされました。やはり利用者は雑誌単位というよりはエビデンスのある文献を中心に利用しているということを非常に強く感じています。
私達は図書館ではありますが、ため込むことよりも常に新鮮な情報が提供できるようにということを大事にしたいと考えています。


小林: 「生きた情報」というのは、トイスラー師の理念にもある「有機体」。それとすごくリンクしますね。

河合: 職員が生きた有機体であるとしたら、情報はもしかしたら生きた無機体なのかもしれないですね。

小林: 4. 生きた情報を提供し、それがより広く利用者に活用されるよう、情報リソースの利用を促すためにどのような活動を

行っていますか?


河合: 一般に公開はしていませんが、図書館のホームページを作り、OPAC、目録検索ができるような環境は整えています。

また単にデータベースをそろえておくだけではなくて、隣接する看護大学図書館司書と共同で年5回「文献検索ガイダンス」を開催して、医師・看護師から看護学生まで参加し、実習形式の講習をしています。他にも院内の各部署や個人からの要望に応じ検索講習を開催するなど、リソースを有効に活用できるよう教育を行って、利用者を支援しています。


小林: 5. モバイルデバイスでの情報提供などもそれを後押ししてくれるのではないかと思いますが、モバイルデバイスで

使える情報リソースの導入については、どのようにお考えですか?


河合: 研修医を中心にiPhoneやスマートフォンなどのモバイルデバイスでの利用を望む声が多くなってきています。

現在幾つかのEBMツールを紹介していますが、今後はそうしたデバイスに慣れた若いユーザーから、世代を遡って浸透していくことが予想されますので、図書館として非常に注目しています。電子ブックの利用も進んでいくと思います。
図書館資料に留まらず、既に電子カルテ閲覧や診断システムの開発なども国内で進んでいるようですので、病院内での情報検索の第一選択がPCからモバイルデバイスになる日もそう遠くはないと確信しています。


小林: 利用のされ具合をみながら、時代に呼応して、リソースの入れ替え、ツールの入れ替えを行われるということですね。

6. 利用者の利用はどのように把握され、どのようにリソース選定に反映させていますか?


河合さんと
河合: 当院は昔からまず利用が優先と考えています。今は電子の時代

ですので、利用統計を取るのも簡単になっていますけれども、冊子については毎日毎日利用したものをワゴンの上に置いて帰ってもらって、それを翌日記録してから返却するという方法をもう何十年も続けています。
それによってどんなものが利用されるかという動向を把握して、次年度の予算を立てるときの参考にしていきます。何が本当に必要なのか、そして何かがどうしても必要だと思ったときにやりくりできる範囲内で常に無駄を排除していく努力をします。
スペースも限られているので、蔵書や雑誌のバックナンバーも必要なものかどうかを見極めて不要と判断したものは処分します。
今回の大震災で、書架が転倒した図書館が東北・関東地区だけでなく、かなり広い地域であるのです。
今後どうするのかと尋ねると、もうこの機会に書架を整理して電子でバックファイルを導入する方向だという声を多く聞きます。
ですが地震により電子化せざるをえないのは大変残念なことだと思います。


小林: 今回の震災は、図書館業界にとってもエポックメーキングなところがあると思いますし、海外からも日本の図書館の動向は注目されて

いるのではないでしょうか。


河合: そうですね。日本医学図書館協会では今回の震災で加盟館がどのくらいの被害にあったかを記録として、纏めているところです。

小林: 7. 最後に、河合様ご自身として、何かチャレンジされたいことはありますか?

河合: 私の前任者は1980年代にアメリカで司書資格を取って、当時注目されていたclinical librarianという業務を持ち帰り試行したとても

先駆的な方でした。EBMの流れから欧米ではInformationistという職が誕生して活躍していますが、日本ではなかなかその実現を見ていません。けれども、そうした志を持ってずっと仕事をしていきたいと思っています。また、病院間のネットワークを作りたいとも思っています。
当院は2名ですが病院では世界的にもワンパーソンライブラリーが多いのです。しかし、医療の世界にあっては、求める資源というのはかなり共通したものがあると思います。また、雇用や予算、選書、研修など悩みは共通だと思います。インターネットの発達している時代でもありますし、世界の病院図書館が連携できるネットワークが作れたらいいなと思っています。そんな大きな夢もあります。


小林: ワンパーソンライブラリーが多いとなると、やはり横のつながりが大切になるのでしょうね。

河合: 一昨年韓国で病院図書館の方とお話しする機会があって、本当に環境が似ていると思ったんです。逆に病院の中では、図書館業務

については相談するところもなかなか見つけにくい。ですから国内では、日本医学図書館協会病院部会などで連携を取って活動していますが、もしかしたら志としては世界共通のものなのかもしれないと思いますので、何かネットワークが作れたらと思っています。
折しも、3月11日の東日本大震災で、甚大な被害を被り沢山の人命が失われました。現在も医療現場では懸命の努力が続けられています。日本医学図書館協会でも、支援の一環として、被災地域の医療者への無料での文献提供を行っていますが、当館も文献提供館に登録し、図書館員・図書館間のネットワークを通じて、少しでもお役に立てることを願っています。
やはり医療の最終目的は患者を助けるところにあると思いますので、そういう環境ですとか資源の差で最終的な医療の質が左右されることがあってはならないと思います。また恵まれないところに対しては逆に支援していって、より公平な医療が提供できるようになっていくといいですね。




*トイスラー師病院設立の理念
キリスト教の愛の心が 人の悩みを救うために働けば
苦しみは消えて その人は生まれ変わったようになる
この偉大な愛の力を だれもがすぐわかるように
計画されてできた 生きた有機体がこの病院である


[プロフィール]
河合 富士美様
図書館短期大学図書館学科(現 筑波大学)を卒業後、自治医科大学図書館に入職。目録係、参考調査係を経て、1985年退職。1986年より聖路加国際病院に勤務。
教育・研究の支援を行う教育・研究センターの一部門である医学図書館のチーフとしてマネジメントを行い、電子ジャーナルを中心とした雑誌やデータベースの選定・管理を行う。
日本医学図書館協会理事として総務会と受託事業を担当。また診療ガイドラインワーキンググループ委員長。2011年より日本医療機能評価機構EBM医療情報事業EBM普及啓発部会委員も務める。

St.Luke

聖路加国際病院様
米国聖公会の宣教医師として日本に派遣されたルドルフ・トイスラー医師によって1902年に東京築地に創設。聖路加国際病院は、キリスト教精神の下に全人的ケアを行う施設であるとともに、卒後医師や看護師その他医療職の研修モデル施設でもある。
1992年に建設された全室個室の新病院は、救命救急センター、予防医療センター、並びに公益財団法人聖ルカ・ライフサイエンス研究所の臨床疫学センターと協力し、臨床医学、看護の研究・教育を行っている。
病床数は520床。職員数が日本の平均と比較して多いのが特徴で、日本の一般病院の100床当たりの従事者数は総数118.8人(うち、医師は13.3人)に対して、聖路加国際病院は100床当たり総数315.2人(医師56.6人)と3~4倍。
チーム医療・臨床研究を推進、医師だけでなく看護・コメディカル・事務など全部門において学習・研究の気運が高い。
「質の高い医療」を実践するため2004年よりQuality Indicatorを調査・公表。
福井次矢院長は日本におけるEBM研究の第一人者で、現在は日本医学図書館協会会長。

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