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ライブラリアン・インタビュー (静岡がんセンター様)

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病院図書館のサービスを、どのようにユーザーである医療者に伝え、届けるか。医学図書館の存在をどう認知させるか。医学図書館従事者なら、誰しも共通に感じる悩みではないでしょうか。 静岡がんセンター 山崎様のユニークで、情熱にあふれる取り組みについて、お話を伺いました。


話し手:静岡県立静岡がんセンター 医学図書館

図書館司書 山崎 むつみ 様


インタビュー日: 2012年6月21日



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1. まず、山崎様が静岡がんセンターでどのようなお仕事をされているか、教えてください。

静岡がんセンターには二つ図書館があります。日本で最初に独立してできた患者図書館「あすなろ図書館」と、医療者用の医学図書館です。私は医学図書館を担当しております。図書館内の管理から資料の選定、購入、資料管理、貸出、レファレンスサービスと、図書館全部の業務を行っています。また、時々、代行検索や調査をやっております。


先生の研究支援みたいな感じのお仕事になりましょうか。
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診療のための学術情報の提供です。臨床現場はチーム医療ですから、ドクターだけでなく医療者すべての方に情報提供し支援しています。


病院外でも発表されたり幅広くご活躍ですが、病院外の活動について教えてください。

病院外の活動は三つあり、そのうち二つが、日本医学図書館協会の活動です。 まず、日本医学図書館協会が認定しているヘルスサイエンス情報専門員の、認定資格運営委員会の委員を務めています。認定作業や、資格の在り方、広報などの検討を行っています。もう一つが、診療ガイドラインのワーキンググループで、ガイドラインのクリニカルクエスチョンの検索をすることがあります。 三つ目は日本病院ライブラリー協会の著作権委員会の委員です。病院図書室としての学術文献の複写のことや、著作権について会員への啓発活動を行っています。薬事行政関係の権利制限については、著作権法制問題小委員会で、「そもそも日本の医療者に、だれでもアクセスできるような学術情報の提供ができてないことの方が問題だ」と言われました。病院図書館というのは、まさにそのウイークポイントの現場にいる感じがします。



2. 山崎様が病院図書館として心がけていらっしゃることを、お聞かせください。

やはり利用者との信頼感だと思います。あの人に頼むと、何かいい情報があるかもしれないと思われる信頼をつくることが、大切だと思っています。もちろん資格とか専門性も重要ですが、なぜ病院図書館が必要か専門の担当者が必要かというところを、もっと具体的にアピールできるようでなくてはいけないと思います。病院図書室は、病院機能評価Ver.6から、独立した審査項目ではなくなりました。また、図書館活動は診療報酬の点数にはなりません。だからと言って、病院図書館は「非生産部門」ではないはずです。そうではないことを見つけて実践しなくてはいけないと思っています。 また、患者さんとお医者さんには情報格差があるといわれます。でも、情報格差は、地域や、医療者の間にもあるように思います。私はその状態をよくみて、皆様に等しく情報を提供して、診療を支えたいと思っています。


山崎様は、かつて企業図書館に勤務された経験がおありですが、企業図書館と病院図書館の違いはどんなところですか。

一つはコストパフォーマンスについての考え方だと思います。企業図書館では、やみくもに「経費削減」ではなく、与えられた予算の中で資料をいかに有効購入し、有効活用するか、その中でどういうサービスができるかというところが違うと思います。 病院の収益は診療報酬できまりますので、サービスについてのコストパフォーマンスや有益性がわかりにくいと思います。 利用者もかなり違います。 医療者は、それぞれニーズも違いますし、そうしたニーズも掴みにくく、また反応もバラバラで、図書館の活動や、図書館が選定した資料をどのようにご利用いただいているかなど、非常にはかりにくいところがあります。


静岡がんセンターの図書館のサービスでユニークなものがありましたら、教えてください。

医学図書館が病院棟とは別の場所にあるので外部への文献複写依頼などは電子メールで受け取っています。外部への依頼作業が完了すると、必ずリターンメールを送ります。手配忘れの防止にもなりますし、ささやかですが、コミュニケーションをとっているつもりです。また、非常勤職員と私の2人で日常業務をおこなっているので、リターンメールによって情報の共有ができますし、記録として残るという点でも便利です。 また、医局には図書返却用の箱が置いてあり、借りるのは図書館でも、返すのは身近な医局で済むようにしてあります。医局へは毎日最低2回は伺っていますので、その時引き取っています。 ユニークとはいえないかもしれませんが、当館では組織的なリモートアクセスの整備が難しいので、コンテンツやシステムのうちいくつかをリモートアクセスで使えるように提供しています。 医療者が学会に参加される時は、患者さんから離れた非日常的な時間で、集中できると伺いました。学会中に宿泊するホテルで勉強されるのですね。そんな時、リモートアクセスが使えれば、論文をじっくり読めるし、学会の発表事例や、引用を確かめることもできます。電子資料ならではの強みですね。リモートが使えれば海外からでも見られるわけですから。



3. モバイルはさらに簡便ですが、お医者さんのモバイル利用について、どのように思われますか。

モバイルといえば、一番関心があるのは電子ブックです。病院の電子ブックは、パソコンレベルでの閲覧が普及しているように思います。でも、医療者の皆様は、もっと手元で隙間時間を使って見たいわけですから、病院ではモバイルデバイスで読める電子ブックの普及が待たれていると思います。立ち上がりも速く、図版も患者さんと一緒にみることができます。感染対策上も紙の本より、よいのではないでしょうか。また、無線LANが装備されていれば、その場で学術情報など、外部の情報を入手することもできます。ですから、診療現場ではどんどんモバイルが使われると私は思っています。 ところで、医師用の日本語電子書籍のモバイルコンテンツが、既にパーソナル用として普及し始めています。これについては、今年の5月の日本医学図書館協会の分科会でも、図書館としてどう対応すべきか検討を始めたと聞きました。図書館が購入している電子資料との関係もありますから、これからの動きには目が離せません。



4. 情報リソースを選定される際の戦略や優先順位がありましたら、教えてください。

最終的な決定要件は、やはり価格です。ですが、それだけではなく、内容が私どもの業務や目指すものに合っているかどうかを考えます。そして、多くの方に納得していただかなければいけませんので、外部への文献複写依頼が多い分野、電子ジャーナル利用データを見て利用が活発な分野を選定します。電子ジャーナルを選定した時、供給が需要をよぶこともあり、予想以上に利用されるときは内心ほっとします。


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普段の利用動向を注視しながら決めていらっしゃるのですね。実際にご希望が耳に入ってくることもありますか。

ほとんどの方は、なにもおっしゃいません。ですが、「この本ありませんか?」という問い合わせに対して所蔵していなかった場合、「図書館で購入しましょうか?」とか、「この図書をどちらで知ったのですか?」などと、逆にこちらからも質問をしてコミュニケーションをとります。そうやって、顔見知りになると、希望資料を伝えてくださるようになったりします。 また、年に1回、七夕の日に「七夕です。」という書き出しでメールを流し、次年度の雑誌の継続や新規購入の希望を伺います。ただ、希望と実際の利用の乖離も見られます。権威と言われている雑誌を導入してみたけど、実は全然使われていなかったとか、電子ジャーナルですと、利用状況が本当によくわかりますね。ですから、「いただいたご希望を参考に、他の情報も加味して、検討させていただきます」と書いてメールを出しています。


選定から決定、契約までのフローはどうされていますか?

医学図書館で選定案を作成し、図書委員会で審議します。そこで承認を得てから発注しています。



5. リソース導入の際の広報活動を含め、普段先生方とどのようにコミュニケーションをおとりになっていますか?

普段のコミュニケーションは、メールがほとんどです。文献複写依頼を受けた時のリターンメールなどです。 図書館は医局と物理的に離れています。だから、医療者の方とface to faceのコミュニケーションを取る努力をしています。たとえば、当センターは毎月、採用があります。辞令交付後のオリエンテーションの時に10分間だけ時間をいただいて医学図書館の紹介をしています。 また、以前、大がかりな医局の引っ越しがあり、先生方は冊子体資料を処分することになりました。その時、医局に入り込んでお手伝いをしました。それが、その後、より多くの先生方に顔を覚えていただけるキッカケとなりました。通称「ポイポイ箱」という箱を置いて、要らなくなった雑誌を入れていただいているのも、以来、定着しています。いただいた資料は医学図書館でお預かりし、図書館の所蔵とするか、処分するか判断しています。いわば廃品回収ですが蔵書構成の補填にもなりますし、それが先生とのコミュニケーションにも繋がっているようにも思えます。


文献や資料を提供するだけでなく、先生方の日常生活に上手に入り込んでいらっしゃいますね。

いえ、まだ、入口に立っているという感じです。「入口に立っている」というと、MRさんと似ていますね。私は事務局にお願いして中途採用の方への説明の10分間をいただけています。たった10分でも貴重な時間。そのあたり、MRさんの活動から学ばなくてはと思っています。そうした積み重ねで、「あの人、誰?」と見られた最初の頃に比べれば、「図書館の人」と認識してもらえるようになったように感じます。


そこをすごく悩まれている病院図書館の方が、多いですよね。

そうですね。でも、なにかきっかけがある筈ですので、そのきっかけを作るように心がけたいですね。たとえば、図書館と医局は私の足で約5分かかるくらい離れています。でも、電子資料は離れていても使えて便利です。医療者は便利なものには関心を向けて下さるので、そうした便利さを提供できれば、それもきっかけになると思います。



6. 電子リソース導入の前と後で変化がありましたか。また、静岡がんセンターではリンクリゾルバを導入していらっしゃいますが、リゾルバを入れたことでの変化は?

当センターでは、電子ジャーナルは2002年の新規開院以来、優先的に購入しており、冊子体からの切り替えという状況を経験していませんので、導入前との比較ができません。しかし、リンクリゾルバは導入前と導入後の変化がはっきりとありました。 フルテキストへのアクセスがわかりすくなったこと、外部への文献複写の依頼は、ほとんどがリンクリゾルバの複写依頼メニューからになったこと、そして、私たち、図書館担当者も電子資料へのアクセス説明、特にトライアル紹介などがやりやすくなりました。リンクリゾルバは検索結果から飛んだ中間窓に「ただいまトライアル中」と表示できます。利用者にも、「今はトライアル中なのだ」とご理解いただけるようになりました。リゾルバでは、アクセスの統計も取れますからとても便利です。そんなわけで、ある程度の電子リソースボリュームを持っているところではリンクリゾルバは、必須な仕組みだと私は思います。 電子ブックに関して言えば、前述の通り、病院ではモバイルデバイスで読める電子ブックの普及が待たれていますが、パッケージで買うほど洋書の需要がないので、一冊単位で変えるビジネスモデルがあるといいですね。ただ、一冊売りは、現在は個人売り(パーソナル)になります。このまま、電子ブックがB to Cで進んでしまう可能性もあり、危惧しているところです。 モバイルはパーソナルなツールです。モバイル利用が加速し、個々人のデバイスで読めるようになると、図書館はいったい何のために存在するのか、気になって仕方ありません。それを考えた時、組織として対応できるのはリンクリゾルバのようなものではないかと思うのです。リンクリゾルバは、個人では持てませんから。 それから、チーム医療では、情報を共有しなくてはなりません。チーム内で情報格差があると、人によって判断が違ったりすることが起きます。でも、図書館が共通ベースとして存在し、そこにアクセスすることによって皆が同じものを読めれば、それが、リンクリゾルバのように「組織が提供する」ことの意味だと思います。パーソナルなビジネスモデルしかない状態では、やはり格差が生まれます。そこを平均化できるのが図書館組織ではないかと思います。


それが、また医療の向上に繋がるわけですね。

そうですね。少なくとも情報は共有できるようにした方がよいと思います。図書館は「ハブ」であり、それが、場所ありきの図書「館」ではなく、組織としてサービスするということではないでしょうか。



7. 今後、病院図書館として、また山崎様ご自身として、どんなことにチャレンジしたいとお考えですか?

格差をなくし、すべての人に等しく情報提供をしていきたいです。それは医療者だけではなく、その先にいらっしゃる患者さんに必ず繋がるものですから。それから、自分自身でも、共に進化し、共に動いていたいですね。 実は、昨年、悩んだ末に個人的にiPadを買いました。「自分が使ってみなくては、いままでの電子資料との違いが分からない」と思ってチャレンジしました。まだ、珍しい頃だったので、持っていると、先生の目にとまることもありました。


先生方も、興味を持ってらっしゃるわけですから、よいコミュニケーション・ツールになりますよね。

そうだとよいのですが。でも、そうやって、図書館の担当者もただ、本を管理するだけでなく、一緒に情報収集をしてくれるのだという経験を医療者の方に持っていただければ、その方がその後、どこにいても、頭の隅に「図書館の人」という存在を思い出し、図書館を盛り立てて下さるのではないかと思いますし、そう願っています。


それも、一種の教育ですね。それは、図書館に従事されている方のミッションですね。

ミッションだと思います。医療者に対しても、図書館界の後輩に対しても。これから病院の図書館の仕事を目指す方々のため、すこしでも地固めしておけば、次の人はそこから先を目指せると思います。 資料のデバイスが紙だろうが電子だろうが、図書館のサービスの根源的なところは過去も今も、変わりません。そこをしっかりと伝えたいですね。 大学時代、卒業研究のためにある研究所の図書館に1週間ほど通ったのですが、そこでは、すでに24時間開館を実施していました。しかし、日中の来館者はほとんどなく、「こんなに誰も使わない図書館では、嫌になりませんか」と私は、図書館員の方に大変失礼な質問をしてしまいました。すると、「今、利用者がいなくても、いらしたときに使えるようにするのが私たちの仕事です」という返事をいただきました。そのことは今でもとても印象的に覚えています。そういうふうに、実際にお目にかかれない利用者へもサービスするという考えは今、まさに、24時間開館の私の図書館でも変わりません。


最後はやっぱり人。人との信頼ということでしょうか。

そう思います。だから、私は図書館の担当司書として、まず存在を覚えていただくことを心がけます。あの人に頼むといい、あの人に聞くと分かるとか。 利用者の皆さんは「いそがしくて覚えきれない」とよく仰います。私達が日頃お手伝いさせていただくのは、まさにそこなのですが、そうした中で、私しかできない専門的なプラスアルファをアピールしたいと思います。そのプラスアルファを持っていることで、信頼を得られるといいなと思っています。



(聞き手: シュプリンガー・ジャパン(株)マーケティング部 小林千鶴子)


[プロフィール] 山崎 むつみ様
図書館情報大学(現筑波大学)卒業後、医療機器メーカー技術開発部図書室に勤務。その後、総合化学メーカーR&D部門・知的財産部の特許・技術情報サーチャーを経て、2002年8月より現職。医療者向け図書館(医学図書館)の管理運営を行う。 現在、日本医学図書館協会認定資格運用委員会委員、診療ガイドラインワーキンググループメンバー、日本病院ライブラリー協会著作権委員会委員を務める。 図書館司書、サーチャー1級、日本医学図書館協会認定資格ヘルスサイエンス情報専門員上級

静岡県立静岡がんセンター様 scchr_logo

2002年9月に開院した、世界トップレベルの高度がん専門医療機関。陽子線治療等の先進的な医療機器や、国内最大級レベルの緩和ケア病室をもつなど、最先端の治療から心のケアまで全人的な医療を提供。「患者さんの視点の重視」を理念に掲げ、患者図書館や患者サロン、相談支援センターの全国的なモデルとなったよろず相談を設置し、年間およそ1万2千件の相談に応じている。
また、がんと向き合う患者さんの暮らしを支援するため、治療の副作用や合併症を軽減させるための支持療法や情報処方の取り組みにも力を入れている。開院当初より、地域の健康医療産業の活性化を図るため、静岡がんセンターを中核としたファルマバレープロジェクトを推進。


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