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ライブラリアン・インタビュー (天理よろづ相談所病院様)

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院内の医療従事者だけでなく、他の医学図書館からも資料導入に際して相談を受けるなど、広く信頼を寄せられている、天理よろづ相談所病院医学図書館。関西、天理の地にあって、地域からの信頼も厚い医学図書館がどのように築かれているのか、病院の歴史とともに、青木様がお話しくださいました。


話し手:天理よろづ相談所病院 医学図書館

主任司書 青木 裕子 様 


インタビュー日: 2013年6月28日



1. 天理よろづ相談所病院の医学図書館をご利用になる方々のプロフィールを教えてください。

当院の医師数は正規、非正規含め現在267名、同じく看護師が314名、医療技師が243名です。当館は、医師だけでなく、コメディカルスタッフにも多く利用されています。 中でも看護部は教育に力を入れており、年間を通して様々な研修や研究発表会があり、そのための図書館利用を奨励しているので、看護師の利用は他の病院に比べて特に多いように思います。



2. 医学図書館では、どのように導入されたコンテンツなどの認知度を上げられていますか?
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新しいデータベースなどを入れた場合には、図書館主催で利用説明会を開催します。また、各部門から図書館利用の勉強会等の依頼があれば、受けるようにしています。 さらに新しい資料の導入については、院内メールや掲示板で知らせたり、当館の電子資料ポータルサイトの「お知らせ」に掲示したりして広報に努めています。しかし、来館者に「こういう資料を入れましたよ」とお声がけした際、「初めて知った」と言われることも多々あり、利用者全員に周知するのは難しいですね。


電子資料が増えて便利になったものの、種類が増えれば増えるほど、より多くの資料があることを認知してもらう必要が出てきますね。

現在、当院には入院棟で医学図書館のある本院、外来診療棟、白川分院の分散した3施設がありますが、来年1月に新入院棟が開院し、4施設となります。図書館は現在の本院に残りますが、利用者の多くが他の施設に移り、来館が難しくなるという状況が予想されましたので、数年前から雑誌をプリント版から電子ジャーナルに積極的に切り替えて、資料の電子化を進めてきました。 電子ジャーナル導入当初は、その提供の仕方に苦労しました。利用できるタイトルが少ない時は、個々の電子ジャーナルのURLを、インターネットエクスプローラーのお気に入りにABC順で登録し、利用者には、それを自分のパソコンにインポートして利用してもらいました。 次第にタイトルが増えてきたので、次はエクセルでタイトルを整理し、貼りつけたURLからリンクするように設定したリストを提供して利用してもらいました。 他にはPubMedのLinkOutに登録し、PubMed上で利用可能電子ジャーナルに当館のアイコンが表示されるようにしたり、医中誌Webの検索結果に当館所蔵誌がわかるように設定したりと、少しでも皆さんに、「この雑誌は使えるぞ!」と認知してもらえるように努力してきました。予算を無駄にできないという意識が強くあり、資料の有効利用を常に考えてやってきました。 しかし、努力した割には、登録漏れやミスも多く、毎年の更新も大変でしたので、2010年からはリンクリゾルバを導入し、当館の電子資料ポータルサイトを立ち上げました。これによって電子資料の利用に漏れが少なくなりました。



3. 導入する情報リソースやサービスを決定する際の優先順位や戦略などがありましたら教えてください。

当館では、資料の契約の際には、利用頻度や価格を重視して、図書委員会で購入・中止タイトルの選定を行います。しかし、そのようにして候補を決めても、各科にアンケート調査を実施して、必ず確認をします。図書委員会側で勝手に決定するということはしません。 電子ジャーナルが主流となり、パッケージ購入も増えて利用可能電子ジャーナル数が劇的に増えましたが、基本的には本当に必要な雑誌を購入することが最重要です。パッケージ購入へ切り替えるにしても、「今購入している個別タイトルが、そのパッケージに何タイトル含まれていて、それを契約すれば、個々の購入タイトルを中止することができるか」ということを前提とし、コンテンツとコストパフォーマンスの両面から資料を決定するようにしています。 シュプリンガーのパッケージは、出版社系の電子ジャーナルパッケージの中ではコストパフォーマンスも大変よく、利用頻度も高い優良資料ではないかと思います。導入して本当によかったと思える資料なので、他の出版社もお手本としてほしいです。



4. 電子リソースが増えたことで、臨床あるいは基礎研究の現場で何か変化は見受けられましたか?

当館は病院図書館ですから、資料が診療のための学術情報として利用されることが一番多いように思います。一方で、医学研究所を備えて、医師やコメディカルスタッフの医学研究支援を積極的に行っていますので、学会発表や学術雑誌掲載の件数も大変多く、そのための情報入手手段としても、図書館資料を利用することが多いようです。病院ですから、皆さん、診療などで忙しいですよね。そんな中、迅速に検索結果が出て、それがすぐフルテキストに繋がり、その場で閲覧・プリントアウトができたり、館外の取り寄せ依頼ができる電子資料リソースは、今や、利用者にとっては欠かせないものになっているようです。



5. 天理よろづ相談所病院ならでは、というサービスなどはありますか?

昨年、従来の既製品図書館システムの契約を中止し、当院の医療情報システムセンターの協力によって、当館独自の図書館システムをつくり、イントラでの運用を始めました。以前の既成品システムの時は、図書館内に専用のサーバーを置き、端末3台を繋いだネットワーク運用をしていましたが、今は院内全体のシステムを管理するサーバーに図書館システムも入りましたので、図書館だけのサーバーが要らなくなりました。そして、このシステムの開発により、利用者は各部署の院内システム専用パソコンで、蔵書検索や貸出資料の確認、貸出予約等ができるようになりました。 利用者マスタも人事システムと共有でき、図書館独自の管理が不要となりました。また、今まで紙媒体で配布していた督促状も、他のシステムとの連携で個人別にメール配信できるようになり、大変助かっています。


確かに、組織内で他にも同じようなデータがあるのに、図書館も個別に利用者の管理をするのは手間になりますね。

そのとおりです。また、図書館システムの保守料が全く不要となっただけでなく、システムの不具合や問題が出てきても、すぐ対応していただけるようになったというメリットが大きかったですね。


利用者から見ても、かなり便利になったのではありませんか。

便利になりました。利用者にとっては、院内システム専用パソコンがある所なら院内のどこででも、簡単な蔵書検索や貸出予約ができ、自分の貸出・返却データ、予約データも確認できるのです。特に貸出予約が好評で、新入院棟開院後はさらに活用してもらえるものと期待しています。システムの完成までに1年ぐらいかかりましたが、使いやすい良いシステムができたと思っています。



6. 関西における医学図書館、という観点では特長と思われるところはありますか。

当館では新任の先生方の入所時には、必ずオリエンテーションを行っていますが、関西地区の一般病院から来られた方は、当館の資料の充実度にかなり驚かれるようです。大学の附属病院から赴任された先生でも、期待以上であったと言ってくださいます。


それだけ資料が豊富な貴重な医学図書館なのですね。他の医学図書館の方にとっても参考になるのではありませんか。

他病院の医学図書館で新しい資料の導入を検討する際に、それがすでに当館で導入済みの資料であれば、取次店から紹介されたとのことで、問い合わせを受けることがあります。また、電子資料を導入しようとされる際、当院から赴任した医師から「天理病院が参考になるよ」と聞いたからと言って、お電話をいただくことも結構あります。


それほど地域での重要性や存在感のある医学図書館になった背景は、どういったことなのでしょうか。

古い言い方ですが、当院の開所当時は、「東洋一」と言われたと聞いています。「東洋一の病院が、天理のこんな片田舎にできた」と。その当時としては、大変充実した病院だったようです。そしていい病院をつくろうという意識がすごく高かったので、そこで働く医師等の診療・研究支援としての図書館も、大学図書館に負けないものにしようという思いがあったようです。その当時ではまだまだ病院の入会が少なかった日本医学図書館協会に、開所早々で入会したことからも、窺い知ることができます。 また当院では、医学研究所を備え、医療従事者の研究支援をずっと行ってきました。さらに、1975年から総合診療方式を活用した若手医師教育制度として、当院独自のレジデント制度を発足させ、臨床医の育成に尽力してきました。このような背景もあり、その診療・研究のサポートとなる図書館が充実したものと思われます。


診療や研究だけでなく、それらのサポートのための図書館というものも、かなり重視されていらっしゃるということですね。

当院には、図書予算を削ると診療の質が落ちるという意識が強くあるようです。その意識が歴代院長に受け継がれてきたので、今もなお病院図書館としては比較的潤沢な予算がいただけているのだと思います。



7. それでは今後のチャレンジについてお聞かせいただきたいのですが、まずは青木様個人として挑戦されたいことは何でしょうか。

近年、「患者図書室」を設置する病院が増えてきています。当館が加盟している、日本医学図書館協会の今年度総会後の分科会テーマとして取り上げられるほど、「患者図書室」は今旬の話題です。正直、当院は数年前から白川分院、外来棟、新入院棟などの建設事業が続いているので、すぐには難しい状況ですが、患者サービスとしては外せないものですので、将来の設置時に、たとえ管理・運営は他職種や他部署になっても、今までの図書館管理・運営のノウハウを生かして関われたらという思いがあります。


患者さんの中には「自分がどういう病気なのか知りたい」といって専門誌をお読みになる方もいらっしゃるようですね。

そうです。患者図書室と当館が連携して医療情報を提供できれば、患者サービスの一助になります。それは当院の目指す"患者さん中心の医療"にも繋がりますので、是非実現させたいです。


常に患者さんへのサービス向上を考えていらっしゃるということですね。 では、最後に医学図書館としての挑戦についてお聞かせください。

当院では、来年の1月から施設が4か所に分散するので、先の図書委員会でも「今後の医学図書館の運用体制をどうするのか」を協議しました。そして、図書館システムや電子資料ポータルサイトを活用し、図書の貸出・返却、院内資料及び院外依頼文献複写の依頼とその配送等、来館しなくても図書館を有効に利用できるように、システム・環境を整備することを決めました。新入院棟か外来棟に、パソコン数台とプリンタを置いた、文献検索用ルームの設置も検討中です。 来館者は電子資料の増加で減りましたが、新入院棟の開院でさらに減少することが予想されます。来館者の減少は、図書館にとっては致命的ですが、このマイナス面も考えようによっては、これまでにできなかった色々なサービスを提供するきっかけになるのではないかと思います。依頼も簡単にして、取り寄せも楽にできるようにし、更には、リモートやモバイルでも提供できる資料をどんどん増やしていく。そうしたサービスが、当館の重要性を認識してもらえるプラス要素になると考えて、今後も「来館せずとも有効利用できる図書館」を目指して、試行錯誤していこうと思っています。



(聞き手: シュプリンガー・ジャパン(株)マーケティング部 井口 みを)


[プロフィール]
青木 裕子様
天理よろづ相談所病院 医学図書館 主任司書。 天理大学文学部国文学科を卒業後、天理よろづ相談所に入所。雑誌・書籍の受入係や相互貸借係を経て、1994年より現職。医学図書館のチーフとして、マネジメントや電子資料・データベースの選定、管理に携わる。 1998年より日本医学図書館協会の企画調査委員会委員、2003年より同委員会委員長。2010年からは同協会の理事も務める。

天理よろづ相談所病院様
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1935年、天理教が人間の救済の一環として設立した「天理よろづ相談所」に始まり、1966年より病院として拡充強化され、再発足。病む人が心身ともに憩える場所であることをめざして、身上部、事情部、世話部の三部門から構成され、医学と信仰と生活の三つの側面から悩める人々の救済に取り組む。1975年、総合診療方式を活用した若手医師教育制度として当院独自のレジデント制度をスタートさせ、翌1976年に全国に先駆けて総合病棟をオープン。1984年には、臨床研修病院の指定を受ける。他には、糖尿病患者のケア、がん診療連携拠点病院としてがん患者や家族のための「サロンいこい」の設置や母親学級など、 "患者さん中心の医療"を目指して、医と心に関わる分野でさまざまな取り組みを行う。また、高度な医療を提供する施設として、常に最新の施設・設備の導入に努め、技術を追求し、よりよい医療の実践を目指す。 医学図書館が入っている本院(入院棟)のほか、外来診療棟、白川分院からなり、病床数は本院815床、白川分院186床。2014年1月には新入院棟が完成、開院し、本院の500床が移行する予定。外来患者数は土曜日も含め1日平均2,000人以上で、年間では延べ66万人。同じく入院患者数は延べ27万人を数え、京阪神地域の基幹病院の一つとしての責務も担う。


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